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応援してくださる方にとって、 向日葵のような存在でありたい 応援してくださる方にとって、 向日葵のような存在でありたい

林 綾子 林 綾子
ひまわり

私という存在を通じて、オーボエの魅力を知って欲しい

皆さんはオーボエがどんな楽器かわかりますか?音色を思い浮かべることができますか?
わからない、とおっしゃる方が多いでしょうか。テレビや街中で流れている音楽にもよく使われているのですが、ピアノやバイオリンほどメジャーではないため、クラシックに馴染みがないと音の判別が難しいかもしれません。 私は中学生の時に初めてオーボエを知り、一瞬で虜になりました。
吹奏楽部に入部して、先輩たちの演奏を聞いたとき……オーボエのもつ、優しく心を癒すような温かい響きに心を掴まれたんです。 現在、私はプロのオーボエ奏者として、オーケストラの公演に登壇したり著名なアーティストさんのコンサートやレコーディングに参加しています。
一方で、普段はクラシックを聞かない方や、自分には敷居が高いと思い込んでいらっしゃる方にもぜひ気軽な気持ちで私の演奏を聞いてもらいたいという考えから、ほぼ毎日ライブ配信(17LIVE)でも演奏しています。
ライブ配信では中島みゆきさんの「糸」や「アメージング・グレイス」「美女と野獣」など誰もがよく知るJPOPや洋楽から選曲しており、おかげさまで毎回見にきて応援してくださるファンの方も増えてきました。
ジャンルの垣根をこえ、一人でも多くの方にオーボエの魅力を知ってもらうこと――それが私の願いです。

「オーボエに救われた」目立たない存在だった中学時代

プロのオーボエ奏者になる!――そう心に決めたのは、14歳の時です。
4歳からずっとピアノを続けていたのですが、中学で吹奏楽部に入部した際に、仲間と音楽を奏でる楽しさに目覚めたことがきっかけでした。
実は最初、見た目のカッコよさからサックスを選択したんです。しかしその後、先輩の演奏するオーボエの柔らかな音色に心を掴まれてしまって、両親に「オーボエでプロになるから楽器を買って欲しい」と頼みこんで個人レッスンを受けることにしました。
当時の私は恥ずかしながら勉強ができるタイプではなく、かといって運動も苦手。引っ込み思案で友達ともうまく付き合えず、クラスでも目立たない存在でした。これといって秀でたところがないから、自分に自信を持てなかったんですね。
しかしオーボエに対しては「負けたくない」「もっと上手くなりたい」という向上心が自然と湧きました。オーボエを演奏していると心の底から楽しいと感じ、ポジティブな気持ちになれたんです。
中学を卒業し、高校生になってからも迷わず個人レッスンを続け、音大を目指してひたすら練習する日々を過ごしました。

音大を特待生で卒業し、奨励金を得ながらプロの道に進んだ

あまり人に話してこなかったのですが、私は23歳の時に父親を亡くしています。17歳の時にはすでに闘病生活を送っていたため、一時は音大進学も諦めかけていたんです。
けれどもプロのオーボエ奏者になることは私の夢であると同時に父の夢でもあったから、どうすれば音大に進学できるだろうかと考えた結果、成績優秀者に与えられる特待生枠を狙おうと決めました。
絶対、音大に入学したい。その一心で、先生の教えを信じ、これ以上はできないというところまで練習しましたね。
その甲斐があって、無事、上野学園大学演奏家コースに念願の特待生で入学が決まりました。ただ、入学後も授業料免除の特待生資格を維持するには、毎年必ず試験に合格しなければならないんです。
正直、相当プレッシャーでした。始発で家を出て練習室にこもり、授業が終わったらまた練習室にこもる……大袈裟ではなくオーボエ漬けの毎日を過ごし、そのおかげで、なんとか4年間特待生でい続けることができました。
優秀な成績をおさめていたこともあり、オーケストラのエキストラ奏者にお声がけいただくなど、音大在学中から少しずつ仕事を始めていました。
ただ、もう少し経験を積み技術を磨きたいという気持ちがあったため、卒業後もすぐにはフリーとして独立せず「桐朋オーケストラアカデミー」に進学することを決めました。研修課程に一発合格することができ、授業料が全額免除になったことも大きな理由でした。
また学校側からオファーされたオーケストラ公演に出演することでギャラをいただくこともできたので、こちらで1年間の経験を積んだのち、23歳のとき、満を持してフリー奏者として独立しました。

「努力は裏切らない」前向きなパワーを共有したい

オーボエは、私の人生を変えてくれました。
何の特技もなく目立たない存在だった私が、オーボエと出会いコツコツ努力を積み重ねたことで、特待生で音大合格・コンクール入賞・憧れだったソロコンサートの開催…etc いくつもの目標をクリアし、自信を持てるようになったんです。
決して平坦な道のりではありませんでしたが、諦めずに音楽を続けたことで培ってきたポジティブなパワーを、今度は私の奏でる音楽で多くの人々に届けたい――これは、プロの演奏家として、いつも胸に留めている思いです。
直近で印象的な出来事がありました。
この2年、新型コロナウィルスの感染拡大で世界中が未曾有の事態にみまわれ、日本でも多くの人たちが経済的・精神的打撃を被りました。まさに、その渦中で大変な状況にあった知人の男性から「林さんの演奏を聴いて勇気を貰った」と感謝のメッセージをいただいたんです。
この方は歯科医院の院長(以下、Aさん)でいらっしゃるのですが、コロナにより患者数が激減し、先の見通しも立たない中で酒に溺れ、鬱状態に陥っていたそうです。振り返ってみると、そうとは知らずにお会いした際、確かに目が虚で手が震えていた記憶があります。
同じ頃、実は私自身もコロナで演奏の場を失ってしまい、どうしたものかと途方に暮れていて……そんな中、とあるアーティストさんから医療従事者に感謝を届ける趣旨の音楽プロジェクトにジョインしないかと声をかけてもらい、喜んで参加を決めました。
Aさんの苦境はご本人から聞き知っていたため、私の演奏が少しでも心の支えになればという気持ちで「よろしければ聴いてみてください」とYOUTUBEのリンクをお送りしました。
その後しばらく経ち、元気を取り戻したAさんにお会いする機会があったのですが、その際「林さんも大変なはずなのに、明るい笑顔で演奏する姿にパワーを貰った」「林さんの奏でるオーボエの優しい音色に心救われた」と言っていただいたのは本当に嬉しかったです。
私にとって、オーボエはもっとも自分を表現できる手段です。思いや考えを言葉にして伝えることは苦手意識があるのですが、そのぶんオーボエの音色に気持ちを乗せて演奏しています。
元気を取り戻して欲しい。前向きに頑張って欲しい。その思いがAさんにちゃんと届いていたことがわかり、私自身の自信にもつながった出来事でした。
私の奏でる音を聞いてくださった方の毎日が、人生が、少しでも前向きに明るくなってくれれば、これほど光栄なことはありません。
応援してくださる方にとって向日葵のような存在でありたい。――音楽家として最大の目標であり、私の人生をかけた願いです。

上野学園大学演奏家コース卒業
桐朋オーケストラアカデミー研修課程修了
Sony Music Entertainment 主催
「STAND UP!ORCHESTRA」団員